ライセンス契約(使用許諾契約)とは?種類・ロイヤリティなどを解説

近年、「著作権」「肖像権」「商標権」などの権利とともに、「ライセンス契約」という言葉が急速に一般化しました。
しかし、どんなものがライセンス契約に該当するか、そしてその種類やメリットなどの基礎知識が少ない方も多いのではないでしょうか。
本記事ではライセンス契約について詳しく解説し、注意点や成功事例もご紹介します。

1.ライセンス契約(使用許諾契約)とは?

ライセンス契約とは、知的財産権を保有する権利者(=ライセンサー)が、権利の利用者(=ライセンシー)に対して、権利の使用を許諾する契約を指します。
このセクションでは、まずはライセンスの基本概念と、ライセンサーとライセンシーの役割、著作権との違いについて説明します。

まずは「ライセンス」から解剖

ライセンスとは、特定の条件下で、知的財産権の使用を許可する権利のこと。
具体的には、ブランド名、ロゴ、キャラクター、技術特許などが含まれます。
ライセンス契約を結ぶことで、ライセンシーはこれらの資産を合法的に使用することができます。

ライセンサーとライセンシーの関係性

ライセンサーとは、知的財産権を保有し、その使用を許可する側のことです。
一方、ライセンシーはその使用権利を取得し、製品やサービスに活用する側を指します。
両者の関係は互恵的であり、ライセンシーがライセンサーにロイヤリティを支払うことで成り立ちます。

「著作権」とのよくある勘違い

ライセンスと似たようなものに、「著作権」があります。しかし、この2つは全く別の言葉。
まず著作権は、クリエイターに付与される法的権利。一方ライセンスは、その一部または全部を第三者に使用させる契約です。
そのため、著作権者がライセンサーとなり、自らの権利を許諾することでライセンス契約が成立します。
この点で、著作権とライセンス契約は密接に関連しています。

ライセンス契約を結ぶメリット・デメリット

ライセンス契約は、ライセンサーとライセンシーの双方に多くのメリットをもたらしますが、同時にデメリットも存在します。
以下の表に、ライセンサーとライセンシーそれぞれのメリットとデメリットをまとめました。

メリットデメリット
ライセンサー・ライセンス料収入による安定したキャッシュフローの確保
・複数のライセンシーによる使用で、ブランド認知向上
・ライセンシーが低品質のものを提供した場合、
ブランド全体の信頼性が損なわれる
ライセンシー・既存のブランド力を活用できるため、新商品やサービスの市場投入が迅速に
・消費者からの信頼を得やすい
・契約条件に従わなければいけないため、創造性や自由度が制約される
・高額なロイヤリティ負担

2.ライセンス契約の種類

ライセンス契約は、知的財産権を有効に活用するための手段であり、様々な種類が存在します。
ここでは、ライセンス契約の代表的な種類について詳しく解説します。
契約の種類ごとに仕組みやメリット、デメリットを理解することで、自社に適した契約形態を選択できるようになります。

(1)ロイヤリティ契約

ライセンシーがライセンサーに対して、使用権の対価として使用料(ロイヤリティ)を支払う、最も一般的な契約形態
なお、ロイヤリティの支払い方法によって、固定型と歩合型の2パターンがあります。

仕組み

  • 固定型: 一定期間ごとに一定額の使用料を支払う形式。
  • 歩合型: 売上高や生産数に基づいて使用料が変動する形式。

なお、本ページの「ライセンス契約におけるロイヤリティとは?」で詳しく説明しています。

メリット

  • ライセンサーにとっては安定した収益源となる。
  • ライセンシーはロイヤリティを支払う代わりに、知的財産を利用してビジネスを展開できる。

デメリット

  • ライセンシーにとって、高額なロイヤリティが経営の負担になる可能性がある。
  • 歩合型は、売上の変動が大きい場合は収益が安定しない。

(2)ブランドライセンス

ライセンシーが特定のブランド名やロゴを使用する権利を得る契約です。
このメリットは、消費者からの高い信頼と認知度を活用できること。そのため、有名ブランドとのライセンス契約に用いられます。

仕組み

  • ライセンサーはブランドに関する特定の条件で使用権を付与。
  • ライセンシーは、ブランド名を活用して商品やサービスを提供する。

メリット

  • ライセンシーはブランドの知名度を活用できるため、消費者からの信頼を得やすい。
  • 市場への迅速な参入が可能。

デメリット

  • ライセンサーにとっては、ブランド価値を下げる危険性がある。そのため、ライセンシーに厳しい制約がかけられることも。
  • 高額なロイヤリティや使用料が発生することがある。

(3)キャラクターライセンス契約

人気キャラクターを使用して商品を開発・販売する権利を取得する契約。
そのため、消費者の感情に直接訴えることができる、強力なマーケティング手段です。

仕組み

  • ライセンシーは、特定のキャラクターに関する使用権を取得する(作品全体ではない)。
  • キャラクターを利用して商品やサービスを展開。

メリット

  • 人気キャラクターの使用により、高い訴求力を得られる。
  • 市場での認知度を急速に高めることができる。

デメリット

  • 人気キャラクターに依存したビジネスモデルになりがち。
  • キャラクターの人気が低迷した場合のリスクが高い。
タカラトミーが公式サイトで公開している「キャラクターライセンス情報」。
https://www.takaratomy.co.jp/tscope/license/04_koeda.htmlより転載。

(4)IPライセンス

IPとは「Intellectual Property」の略で、知的財産権を意味します。
そのなかでもソフトウェア、音楽、映画などのデジタルコンテンツの使用権を付与する契約です。
インターネットやスマートデバイスの普及により、近年特に重要性が高まっています。

仕組み

  • ライセンシーは、デジタル著作物の使用権を取得する。
  • ライセンサーはIPを使用する権利を提供し、ロイヤリティを受け取る。

メリット

  • 簡単かつ広範囲での配信に適している。
  • 新しいビジネスモデルやプロダクトを迅速に展開できる。

デメリット

  • 不正コピーや海賊版のリスクがある。
  • デジタルコンテンツの迅速な価値低下の可能性。

(5)特許ライセンス

特許技術の使用権をライセンシーに付与する契約です。
この契約を利用すれば、新技術を活用した革新的な製品を市場に投入することができます。

仕組み

  • ライセンシーは、特許の使用権を取得。
  • 特定の技術を利用し、新しい製品やサービスを開発する。

メリット

  • 新技術を迅速に導入できる。
  • 技術革新を促進し、市場競争力の強化につなげられる。

デメリット

  • ロイヤリティは高額になることが多く、負担が重い。
  • 特許期間が限定されているため、長期的なメリットが得にくい場合がある。
UNITT 一般社団法人大学技術移転協議会のHPより転載
https://unitt.jp/tlo/activity/

3.ライセンス契約におけるロイヤリティとは?

ライセンス契約におけるロイヤリティは、ライセンシーがライセンサーに対して支払う使用料のことです。
ここでは、ロイヤリティの計算方法や適正な料率、注意点について詳しく解説します。

ロイヤリティの計算方法

ロイヤリティは、大きく分けて固定型と歩合型の2種類があります。
固定型は、一定期間ごとに一定金額を支払う形式。一方、歩合型は売上高や生産量に応じて支払額が変動する方式です。
これには、それぞれにメリット・デメリットがあり、契約内容に応じて適切な方法を選択する必要があります。

適正なロイヤリティ料率とは?

適正なロイヤリティ料率は、契約の性質や業界の慣習、双方の交渉力によって異なります。
一般的に売上高の数パーセントが妥当となることが多いですが、料率はケースバイケース。
そのため、契約前にしっかりと市場調査を行い、適正な料率を設定することが重要です。

ライセンス契約とロイヤリティに関する注意点

ライセンス契約を結ぶ際には、ロイヤリティの支払い方法や計算方法を明確に設定しましょう。
また、支払い遅延や契約違反に対するペナルティの取り決めも必須です。
これにより、双方が安心して契約を履行できる環境が整えられます。

4.ライセンス契約の注意点

新たなビジネスチャンスを得られるライセンス契約ですが、実はいくつかの注意点があります。
下記にに、代表的な注意点をまとめました。

ライセンスエージェントとは?

ライセンスエージェントは、ライセンサーとライセンシーの間を仲介し、契約を円滑に進める存在です。
このエージェントを活用することで、専門知識や交渉力を借りて、有利な契約を結ぶことができます。

ライセンス契約の内容

ライセンス契約には、契約期間や地域、販売地域、使用条件などが詳細に定められています。
これにより、双方が明確な枠組みの中でビジネスを展開することができ、トラブルを未然に防ぐことが可能です。

ライセンス契約締結時の注意点

ライセンス契約を締結する際には、契約書の内容を詳細に確認することが不可欠です。
特に、ロイヤリティの支払い条件、契約解除条件、知的財産権の取り扱いについては慎重に確認が必要。
必要に応じて専門家に相談することをお勧めします。

5.ライセンスビジネスの成功事例

ライセンス契約には、どんな成功事例があるのでしょうか?
具体的な成功事例から、ライセンスビジネスがどう機能するのかを解説します。

IPライセンスビジネスの成功事例

ディズニー

ミッキーマウスを始めとするキャラクターライセンスを通じて、グッズやテーマパーク、映画など多岐にわたるビジネスモデルを構築しています。
ディズニーのキャラクターライセンスは、世界中で高い人気を誇り、ブランドの強みを最大限に活かしています。

サンリオ

1974年に誕生したハローキティ。それから多くの製品でライセンス展開され、世界中で有名なキャラクターとなりました。
サンリオは、キャラクター商品の多様化に加え、コラボレーション企画を積極的に推進し、ブランド価値を高め続けています。

ハローキティとGUCCIのコラボ企画
PR TIMESより転載
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000151.000000930.html

ビジネスライセンスで成功している日本企業

ライセンス契約を活用して成功している日本企業も数多くあります。

バンダイ

バンダイは、モバイルスーツ「ガンダム」シリーズのキャラクターグッズを中心に、多くのキャラクターライセンス商品を展開しています。
特に、ガンプラ(ガンダムプラモデル)は世界中で高い人気を誇り、バンダイの収益の中心的な存在となっています。

ユニクロ

ユニクロは、さまざまなキャラクターとのコラボレーション商品を展開しています。
特に「UT(ユニクロTシャツ)」として、マリオ、ディズニー、スヌーピーなど多くのキャラクターTシャツを販売し、消費者の支持を得ています。これにより、ユニクロのブランド力と収益性が向上しています。

2019年のUTと「スーパーマリオ ファミリーミュージアム」のコラボ。
以下より転載
https://www.uniqlo.com/jp/ja/contents/feature/ut-archive/brand/19SSMA/

まとめ:ライセンス契約をビジネスに活用しよう

ライセンス契約は、知的財産権を有効に活用するための強力な手段です。
収益の最大化やブランド認知向上、迅速な市場投入を目指すために、正しい知識と戦略を持ってライセンス契約を結びましょう。
上記の成功事例を参考に、自社のビジネスに適したライセンス戦略を策定することが大切です。特に、新しいマーケットへの参入や既存製品の強化には、効果的なライセンス契約が非常に有用です。

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