日本や世界のミステリー・オカルトを追い続け、2024年には創刊45周年を迎えた雑誌『ムー』。この『ムー』が現在、クラウドファンディングサービスのCAMPFIREとタッグを組み、日本各地の不思議スポットを盛り上げるプロジェクトを推進しているのをご存知でしょうか。
なぜ、雑誌メディアがクラウドファンディングを?そして、地方創生への関わり方とは?そこには紙面からは知り得ないある熱い想いが……!『ムー』編集部の望月さんにお話を伺いました。

ミステリーで地方を盛り上げたい!「日本不思議再興計画」とは

──『ムー』と地方自治体、そしてクラウドファンディングと、意外な組み合わせに感じます。このプロジェクトが始まった経緯を教えてください。

望月さん:まず前段階として、私たちには「日本不思議再興計画」というテーゼ(テーマ)がありました。『ムー』はもともと、UFOふれあい館(福島県)やキリストの墓(青森県)、四国のUFOラインなど、日本各地の不思議なスポットを取材し、紹介し続けることで成り立っている媒体です。

実は、ツチノコや河童など、すでにご当地ミステリーを町おこしに活用している地域は数多くあります。こうした地域の大切な財産である「不思議」を、『ムー』的な視点で見直すことによって、新たな観光資源へと昇華させ、地域に貢献していこう。それが2〜3年前に掲げた「日本不思議再興計画」の根幹です。

──メディアとして取材をする立場から一歩踏み込んで、自治体や企業とのプロジェクトへと発展した理由は何でしょうか。

望月さん:各地の自治体さんや観光団体さんとコラボをする中で、現実的な課題も見えてきました。それが「予算」です。地方自治体は決して潤沢な予算を持っているわけではなく、金額も用途も非常に限られています。そのため、東京の出版社である『ムー』に利益を提供するために事業を組むこと自体、ハードルが高いというのが正直なところでした。

しかし、各地の不思議な財産は、間違いなくその土地の価値として存在しています。私たちとしても、これまで地方のミステリー記事に支えられてきた歴史がありますから、「地方ミステリーへの恩返し」として応援し続けたいという強い想いがある。そこで出会ったのがCAMPFIREさんです。CAMPFIREさんには、地元のお祭りを盛り上げたり、記念館を作ったりと実績があります。クラウドファンディングであれば、地元の方々の「ミステリーで街を盛り上げたい」という純粋な願いをダイレクトに形にできるのではないかと考えました。

「恩返し」から始まる地元ファースト

──なぜ、自治体の予算ではなくクラウドファンディングという手法を選んだのでしょうか。

望月さん:私たちは絶対に「地元ファースト」でなければならないと考えているからです。地元の方々に「この不思議なお祭りを残したい」「地元の伝承を伝える博物館を作りたい」という切実な思いがある。そこに特有のメディアパワーや取材能力を持つ私たちが関わって実現していく。地元のための企画を、「ムー」が応援、ブーストする。この順番が非常に重要なんです。

──あくまで主役は地域の方々であり、そこを『ムー』がお手伝いをするというスタンスなのですね。

望月さん:ええ。本当に「恩返し」の意味合いが強いんです。例えば、現在進行中の広島県庄原市西城町の「ヒバゴン」映画化プロジェクトもそうです。ヒバゴンは日本のUMA(未確認生物)として、『ムー』でも幾度となく記事にさせていただき、誌面を支えてもらった存在です。ヒバゴンが盛り上がってくれることは、『ムー』というメディアにとっても大きな喜びです。第一にあるのは、「ヒバゴンを盛り上げたい」という純粋な応援の気持ち。こうした関係性こそが、持続可能なコラボレーションの形だと思っています。

広島県庄原市西城町の「ヒバゴン劇場映画化プロジェクト」

──「ヒバゴン」映画化プロジェクトについて、どんな作品になるか少し教えてください。

望月さん:未確認動物UMAであり、山の精霊のような存在であるヒバゴンと町の人たちとの交流を描いた、ご当地愛にあふれる作品になるそうです。「ヒバゴンとは何なのか」「西城町とはどんなところか」などが知れる情報映画でもあり、特撮も楽しめるドラマ的な映画でもある。怪獣映画を想定している方もいるかもしれませんが、決してバトルや破壊という感じはないそうです(笑)

メインとなるのは、山の住人(ヒバゴン)と町に暮らす人々との交流。「地元の方が愛が強いから、ヒバゴンは敵対する存在として描かない」ため、非常にご当地愛の溢れた内容になると思います。ヒバゴンのスーツアクターになれるリターンやエキストラも募集していますので、ぜひ覗いてみてください!

「知ると意味が変わる」ミステリー観光資源の魅力とは?

──一般的な観光資源と、「ミステリー資源」の決定的な違いはどこにあると感じますか?

望月さん:決定的な違いを挙げるとすれば、「知っていることで場所の意味が変わる」という点です。一般的な観光資源は、歴史的に承認されていたり、教科書に載っていたりと、確約された価値であることが多いですよね。一方でミステリー資源は、一見しただけでは何のことかわからない場所も多いんです。

例えば、愛媛県の「UFOライン」。景色が素晴らしいドライブコースですが、実は約30年前にUFOの写真を撮った人がいて、そこから「雄峰(ゆうほう)」と「UFO」を掛け合わせた名前がついたという逸話があります。これを知っていると、ただの綺麗な道が「UFOが出るかもしれない特別な道」に変わります。

──背景にあるストーリーを知ることで、旅の体験が深まるのですね。

望月さん:そうなんです。お寺にある「河童の手のミイラ」も、「これを取り出すと雨が降るんだよ」といった地元ならではの伝承を聞くことで、一気に面白みが増します。たとえ科学的に胡散臭いと言われるようなものであっても、その物語が地元の方々に大切にされてきたという事実こそが価値なんです。皆さんが知っている普通の観光地に、実は裏の意味や物語が隠されている。それを見出すのが「ミステリー観光資源」のあり方です。

「日本不思議再興計画」で始まった石川県羽咋市の事例

プロジェクト成功の鍵は、なによりも「情熱」

──プロジェクトの候補地を選ぶ際に重視しているポイントはありますか。

望月さん:起案者となる担当者の、何よりも「情熱」を重視しています。クラウドファンディングは、単にページを作ればお金が集まるという魔法の杖ではありません。準備の段階で関係各所と調整し、リターンを用意し、熱い想いを言語化しなければなりません。これは相当なエネルギーを必要とします。先述の「ヒバゴン」のプロジェクトも、西城町観光協会の岡崎さんという、長年ヒバゴンに関わり続け「映画を作りたい」という強い夢を持っていた方の情熱があったからこそ実現しました。

──ネタが面白いかどうか以上に、「誰がどれだけ本気か」ということですね。

望月さん:そうです。プロジェクトを完遂するまでには数ヶ月、あるいは年単位の時間がかかるもの。その間、情熱を燃やし続けられる方でないとお互いに不幸になってしまいます。逆に言えば、情熱さえあれば、資金繰りやプロモーションの手法は、クラウドファンディングのプロであるCAMPFIREさんや、企画のプロである『ムー』でガイド可能です。

不思議ネタで戸惑っている方、ぜひ『ムー』にご相談を

──今後、この取り組みをどのように広げていきたいとお考えですか。

望月さん:大掛かりな仕掛けやイベントをして一度人気になるだけでなく、継続して人が来るような「動線」や「拠点」を作っていく支援をしたいですね。例えばツチノコが現れた場所には、看板を立てたり、簡単な資料館を作ったり。そこに来れば何かしらのアクションができるようにすることが重要だと思います。『ムー』の紙面やWEB、SNSをフル活用して、「そこに行けば何か面白いものがある」というワクワク感を醸成していきたいと考えています。

──最後に、地方自治体の担当者様に向けてメッセージをお願いします。

望月さん:4月になり、新しく観光やイベントの担当になられた方も多いかと思います。中には、「よくわからない奇妙なお祭りの担当になってしまった」と戸惑っている方もいるかもしれません(笑)。もし、皆さんの地域に眠っている不思議なネタや、それをどうにかしたいという情熱があるのなら、ぜひ一度ご相談ください。予算がない、きっかけがないと諦める前に、まずはその「不思議」を世に問うお手伝いをさせてください。クラウドファンディングという形で、一緒に地域の未来を再興していきましょう。

まとめ

一見すると「オカルト」と「地域活性化」は対極にあるように思えるかもしれません。しかし望月さんのお話を伺い、その根底にあるのは「地域に眠る物語への深いリスペクト」であると感じました。特別な観光施設を建てる予算がなくても、古くから伝わる一本の奇妙な伝説や、一度目撃された未確認生物の噂が、地域の誇りとなり、人を呼び寄せる力になります。「うちの町にも、誰にも信じてもらえないけれど面白い話があるぞ」。そんな熱意を持つ担当者様にとって、この『ムー』の挑戦は、新たな一歩を踏み出す大きな希望になるはずです。