『空想科学読本』でおなじみの空想科学研究所が、みずほフィナンシャルグループと異色のコラボレーション。誰もが知る「昔話」を題材に、金融や経済を楽しく学ぶ『空想金融教室』が生まれました 。空想科学研究所の柳田理科雄氏に、コラボの経緯から制作裏話、そして金融への想いまで、たっぷりとお話を伺いました 。

柳田理科雄氏 プロフィール

空想科学研究所主任研究員。東京大学理科Ⅰ類中退。さまざまな学習塾の講師を経て、1991年「天下無敵塾」を設立するが、経営に失敗して塾は赤字に陥る。
95年、宝島社の編集者だった友人・近藤隆史に提案され、塾の赤字を埋め合わせるために『空想科学読本』を執筆。60万部のベストセラーとなるが、印税の入金が間に合わず、塾は倒産した。
99年、塾講師から執筆へと活動の中心を移し、近藤と共に空想科学研究所を設立。書籍の執筆を続ける一方で、各地での講演、メディアへの出演なども精力的に行っている。明治大学理工学部の兼任講師。「理科雄」は本名。
(空想科学研究所 公式HPより引用)

あらゆる作品を科学的に考察してきた空想科学研究所

──それではまず、「空想科学研究所」がどんな会社か教えてください

柳田さん:空想科学研究所は、『空想科学読本』などの書籍を中心に、マンガやアニメ、ゲームの世界を科学的に考察している会社です。『空想科学読本』は、1996年に刊行してベストセラーになりましたが、その後は『ジュニア空想科学読本』『ポケモン空想科学読本』など小中学生向けの書籍も多く刊行するようになり、幅広い世代に親しまれています。

──私も子どもの頃に楽しく読ませていただきました。これまでに膨大な数の検証を行ってきたのではないでしょうか?

柳田さん:これまでに検証してきた現象やエピソードは、1000以上になります。「『ジュニア空想科学読本』をきっかけに理科が好きになりました」「理系に進みました」「研究者になりました」といった声もたくさんいただいています。

柳田さんは、実はおカネの話が苦手!?

──ここからはコラボについて伺います。まず、コラボに至った経緯は?

柳田さん:みずほFGさんから「子どもたちに向けた金融教育に力を入れたい。金融には難しい面もあるけれど、『空想科学読本』のように、子どもたちが楽しく学べるものにしたいので、ご協力いただけないか」との相談を受けたのがきっかけです。

──空想科学と金融教育は、コラボが想像しにくい組み合わせに感じます。金融は、もともと得意なジャンルだったのですか?

柳田さん:僕は30代で学習塾を倒産させた経験があります 。空想科学研究所も、いま経営難にあえいでいます 。
正直、おカネの話は苦手です 。金融について語る資格はないとさえ思っていました 。

──そうなのですね!ではなぜお引き受けに……?

柳田さん:みずほさんの「子どもたちにおカネのことを学んでほしい」という熱い思いに心を動かされました 。
でも、本当に、おそるおそる…という気持ちでお受けしました 。

昔話も「金融の視点」から考えると新しい世界に

──今回のコラボの目玉、注目ポイントを教えてください。

柳田さん:題材が「昔話」であることだと思います。『浦島太郎』も『桃太郎』も『白雪姫』も、誰もが知っているお話ですが、それを金融の視点で見ると、まったく違う世界が開けてくる。そして、「おカネについて、そう考えればいいんだ!」と目からウロコがポロポロ落ちます。まさか『かさじぞう』から、こんなおカネの学びがあるとは…と、かなり驚かれると思います。

──たしかに、誰もが知ってる話からだとスムーズに知識を得られそうですね!他には注目ポイントはありますか?

柳田さん:この企画のなかでは、みずほFGの皆さんを「みずほさん」という1人のキャラにしていますが、なんとも味わい深いキャラでして、そこにも注目してほしいです。僕が作ったキャラというわけでもなく、みずほさんと話していると、実際に「人間くさくて魅力的だなあ」と思うことばかりで、自然とそうなりました。

『白雪姫』の悪役さえも幸せにする金融の力

──コラボにまつわる裏話がありましたら教えてください

柳田さん:『白雪姫』の話は、驚きでした。世界でいちばん美しかったお妃が、自分よりきれいになった娘を殺めようとする物語で、本当にひどい母親ですよね。ところが、みずほさんは「おカネの力で、白雪姫もお妃も幸せにできないでしょうか」と言い始めて、その方法を真剣に考えるんです。

──金融の力でそんな展開ができるとは!驚きです(笑)

柳田さん:はい、僕のなかにも「お妃を幸せにしよう」という発想は全く無くて、もう衝撃的でした。
そういうことが何度もあって、「こんなに面白い話は、ぜひ多くの子どもたちに伝えたい」と思っていたら、書籍化の話が持ち上がりまして…。
『空想金融教室』はみずほさんのサイトで連載していたのですが、銀行のサイトを子どもたちが見ないでしょうから、本にすることができたのは本当に嬉しかったですね。

出張授業も実施している『空想金融教室』

科学好きからも「金融やおカネもめちゃ面白い」の声が!

──リリース後、反響はありましたか?

柳田さん:サイトでの連載を読んだ知人から「あんな柔軟なこと、本当にみずほの人が言ってんの? 柳田が勝手に考えて書いてるんでしょ?」と言われたことがあります。もちろん全否定しましたけど、そう思われるのってすごいですよね。いや、本当にみずほさんの発想は面白いです。

──楽しく学べるということですね!今回の書籍への反響はいかがですか?

柳田さん:本になってからは、「おカネの知識だけではなく、金融の思想がわかる」「子どもの金融教育のために買ったけど、面白くて自分が読んでしまった」といった声が多くて、本当に嬉しいです。普段の僕のファンは「科学好き」な人も多いのですが、これをきっかけに「金融やおカネもめちゃ面白いと知りました」と言ってこられますね。

苦手意識を覆す、誰もが楽しめるお金の話

──最後に皆様にメッセージをお願いします!

柳田さん:おカネや経済の話は、難しく感じられますが、自分たちの生活や将来と深くかかわっています。
おカネの話は本当に面白く、奥深く、そして身近です。
『空想金融教室』で、みずほさんの発想に触れると、あれほど苦手意識を持っていたおカネが、自分の味方になってくれそうな気がしてきます。
その価値観の転換はちょっとすごいです。子ども向けの本ではありますが、大人にとってもメチャクチャ役に立つと思います!
「金融ってムズカシそう」「自分には関係ない」と思っている人にこそ、ぜひ読んでいただきたいですね。それって、つい先日までの僕自身のことなのですが。(笑)

書誌情報 

  • 書籍名:『昔話でおカネの基本がわかる!空想金融教室』
  • 著者:柳田理科雄
  • 解説・監修:みずほフィナンシャルグループ/協力:株式会社博報堂・博報堂ケトル
  • 発売日:2025年7月23日(水)
  • 定価:1980円(本体1800円+税)
  • 仕様:A5判/256ページ/オールカラー
  • ISBNコード:9784092274426
  • 発行:株式会社小学館
  • ※〈みずほ〉は社会貢献活動の一環として、監修・解説を行っております。

収録内容 

本書では、エピソードを全5章に分けて紹介。第1章では、おカネの価値や考え方の話、第2章では、暮らしに紐づく保険やおカネのトラブルの話、第3章では、社会にかかわる税金や法律の話、第4章では、自分の人生にかかわる働き方や老後資金の話、第5章では、ビジネスに関する話を学べます。

  • 【第1章】 おカネってなんだ!?
    • (1)『さるかに合戦』で考える[おカネと資産]
    • (2)『浦島太郎』で考える[おカネと時間]
    • (3)『ごんぎつね』で考える[おカネと信用]
  • 【第2章】 暮らしと保険
    • (1)『舌切りすずめ』で考える[金融トラブル]
    • (2)『シンデレラ』で考える[生命保険の役割]
    • (3)『三匹の子ブタ』で考える[損害保険と土地活用]
  • 【第3章】 社会と税金
    • (1)『ハーメルンの笛吹き男』で考える[おカネと契約]
    • (2)『かぐや姫』で考える[おカネと法律]
  • 【第4章】 仕事と人生
    • (1)『かさじぞう』で考える[老後の資金]
    • (2)『アリとキリギリス』で考える[おカネと働き方]
  • 【第5章】 おカネとビジネス
    • (1)『鶴の恩返し』で考える[ビジネスの構造]
    • (2)『桃太郎』で考える[おカネと事業計画]
    • (3)『白雪姫』で考える[新規事業の作り方]

まとめ

柳田氏自身も苦手意識があったという「お金の話」 。それを、みずほフィナンシャルグループの担当者の柔軟な発想と掛け合わせることで、誰もが楽しめるエンターテイメントに変えてしまいました 。本企画は、金融知識だけでなく、物事を多角的に見る楽しさや、困難を乗り越えるための新しい視点を教えてくれます 。お金との付き合い方に悩むすべての人にとって、大きなヒントが隠されているのではないでしょうか。